台風の日
最近読んで面白かった本。
帯に書かれた単語の羅列、
「怪獣、猫、兄、宇宙人/台風、同棲、自由人」
これ以上のコピーはない、というくらい、このままの話です。
日常のシーンの中にふわっと現れる怪獣、宇宙人、強盗、ダメなおっさん、etc...
なにか起きてるはずなんだけど、なにも変わらない。
ゆっくりとにじむように広がっていく異様な状況に、誰も慌てたり恐れたりしない。
続いていく日々に飲み込まれて、皆のんきに、でもしたたかに、ぱっとしない生活をくり返す。
天地がひっくり返るようなすごいことが起こらないかなー、と期待しながら。
異様なものを含んだまま、何事もなかったかのように、
事実として、日常は続いていく。
それがおかしくて、せつない。
表題作「台風の日」。
静かに水没していくアパート。
部屋の中でぼそぼそと続くしょうもない与太話。
窓の外は大災害でも、封鎖された空間では、いつもどおりお昼のラジオ体操が放送されている。
押し入れから突然かわいい女の子が現れて…、なんてことは当然起こらない「つまんねー」一日。
この作品がとても美しくて好きです。
この作品、「月刊!スピリッツ」の2011年4月号に発表されたそうだけど、
震災前ということだろうか。