大人のうわっつら
小学生を相手にした仕事をしている時、
ちょっとした失敗ですぐ
「うわ、死にてー」だの
「オレなんてもう消えた方がいいな」だの言ってくる男の子がいた。
そういう時わたしはすかさず「だいじょうぶ!だいじょうぶ!」と言った。
なるべく動揺を悟られないように大声で言った。
わたし「人間誰でも失敗はある!」
男子「オレは失敗ばっかりなんだよ〜」
わたし「それを乗り越えるのが人間だ!だいじょうぶ!」
男子「オレ乗り越えられないからもう人間じゃないよ〜」
わたし「まだがんばれるよ〜、だいじょうぶ!」
男子「もうダメだ〜、がんばれない、死ぬ〜」
何を言ったって、揚げ足をとるような形でネガティブワードを返してくる。
わかるよ。
恥ずかしながら、大人のわたしもすぐそういうこと言っちゃうんだよ、男子よ。
死にたくなるような恥ずかしいこと、みっともないことのくり返し。
きみを励ます立場なんかじゃなくて、きみと同じだよ。
でも大人はやっぱり小学生に軽々しく「死ぬ」なんて言わせちゃあだめで、
ましてや同調なんてとんでもない。
「死ぬ」ってことばが、歳をとればとるほどに、彼くらいの年の頃よりも
ずっと重くなってくるせいもあるだろう。
小学生に「死ぬ」なんて言われたら、
軽口だってわかってはいても、つらいし、あせるんだよ。
無責任ですっかすかな「だいじょうぶ!だいじょうぶ!」を
くり返すしかないんだよ。
いったい何の「だいじょうぶ!」なんだこれは、
と思いながら、できる限りのつくり笑顔で。
ぜんぜんだいじょうぶじゃない自分をよーく知っていながら、
彼を励ますことばの虚ろさよ。