どうでもよくない日記

とりとめない日記です。

小さな森を買う

前にも書いたのだが、
わたしが住んでいるところは冬は雪が多く、
一面灰色の世界になる。
銀色にきらめいたりはせず、
空も海も地面も、どこまでも心が沈んでいくような暗い灰色で覆われる。

ただでさえ雪が積もれば家にこもりがちになる季節、
春を待つあいだ、なにか心の彩りがほしい、と思った。

そこで白い山野草を買った。
ただ「山野草」と書かれた札が刺されているだけで、
じつは名前もわからない。
図鑑で調べたところ、たぶん、一輪草の仲間じゃないかなと思う。
竹を半分に切ったうつわに土をはり、植え付けてあるので、
鉢に移し替えたりしなくても、
そのまま飾るだけでなかなかいい雰囲気だ。
花自体も、いかにも野の花というさりげない可憐さがあっていいのだが、
土に貼られた苔がまた良かった。
細く明るい緑色の苔が土から無数に立ち上がっているのを近くでまじまじと見ると、
ミニチュアの森の中にいるような気分になってうっとりした。
うちの中に森…
うちの中に生命がある、ということがなんだか、
こもりがちな時も励みになるような気がする。
そう思ったら買わずにいられなかった。
こうして700円の、小さな森の地主になった。


何しろずぼらな性質だし植物に詳しくないので、
うまく世話できるかどうか自信がないが、
この山野草を冬を乗り切る心の支えとして、
大事にしようと思う。