花束を君に
宇多田ヒカルの「花束を君に」がすごい。
初めてフルで聴いた時、動揺してしまった。
間違いなく感動しているのだけど、味わったことのない感動なのだ。
曲のコアには、真っ暗で何も見えない、ものすごく深い絶望がある。
でも毛布のようにあったかいものがそれを包み込んで、
大きなやさしい塊になっている。
一行も一音も無駄なく、すべてが宝物のように尊い。
彼女個人が生きてきた人生を何かしら重ねてあれこれ言うことは容易いけども、
そうすることをやわらかく拒む高潔さがこの曲にはある。
よく知りもしない他人が彼女の気持ちを推し量るというのは、
ただの下衆の勘ぐりにしかならない。
曲を聴こう。
ただそれだけで何も付け加える必要はない。
「どんな言葉並べても真実にはならないから」、
ほんとうの気持ちには決して届かない。
でも、だから、その絶望を前に、
「花束を君に」贈るのだ。
このとてつもないメッセージが、
たった4分40秒のポップミュージックとなって、
ラジオやテレビやいろんな媒体で流れるなんて。
ポップであるということの贅沢さ。
なんという偉大さ。